前回ははじめてアナログコンピュータのソフトウエアへ首を突っ込みました。
いままではアナログコンピュータを構成するコンポーネントの中の回路の基礎となる「過渡現象」について長々と手を変え品を変えて私が代々木中学校の生徒だったころに技術家庭科で習った(実習)話を古びたノートを見ながらご紹介してきました。
その前は機械的アナログコンピュータとしてケルビン男爵さんの積分器を基にご紹介し、更に同じ計算を電気、電子で実現する場合の理屈をこねくりながら紹介してきました。
そして最近は能動素子と呼ばれる真空管やトランジスタなどのうちまず各種真空管の基本的な原理をご紹介しました。
昔から真空管やトランジスタや電磁リレーやパラメトロンのようなものを能動素子と言いまして、抵抗器、コイル、コンデンサなどを受動素子と呼んでいます。
何んでそう言うのかはさっぱりわかりません。
抵抗はオームの法則でわかりやすいし、コイルは電磁石やモーターや発電機で知らない人は居ませんし、コンデンサはカラオケ屋さんのマイクを握りしめている人にとっては恋人みたいなものです。
それに対して真空管や電磁リレーやパラメトロンやトランジスタになじみを感じているひとは少ないだろうと思っています。
でも何んで「能動」なのかはさっぱりわかりません。
わからないことは調べるよりも忘れてしまう性格の私はさっさと話題を変えて算術式をアナログコンピュータのブロック線図でプログラミングして、それをご紹介してごまかすことに決めました。
まずきょうも最初に手描きの図絵をご覧ください。
図絵のいちばん上のほうに0.3x + 1 = zという算術式があります。
そのすぐ下にある絵がアナログコンピュータへ計算させるために書いたブロック線図です。
なんで未知数(xとz)が2つもあるのに式は1行なのでしょうか。
それはアナログコンピュータでxにさまざまな電圧をかけて、それぞれのxの値(電圧)ごとに答えをzという解を出力するということにしています。
「xが○○のときのzは△△で・・」みたいに解を求めることを繰り返すようにした他愛もないブロック線図をご用意しました。
手描きの図の先ほどの続きをご覧ください。
たいていの教科書では(私が今まで見てきたアナログコンピュータの教科書や先生からの授業では)こういう簡単なブロック線図については解説が無くて「見れば誰でもわかるよね」という乱暴な教え方ばかりでした。
確かに見ればわかるけどそれではあまりにも愛想が無さすぎるので(余計なお世話ではありましょうが)解説文を入れます。
ブロック図を見ただけですべてをわかってしまったかたもガマンしてお付き合いください。
まず最初のきっかけは左からxという電圧の信号が来ます。
○の中に0.3と書いてあるのは「入力信号の電圧を0.3倍にする係数器」です。
入力電圧(x)は何ボルトでもいいけど0.3倍します。
それともうひとつの入力電圧1ボルトを加算器で足しますが、符号がひっくりかえってマイナスの電圧になります。
そこで最後は符号変換器でプラスに戻した出力電圧(z)についてこれを解とします。
いくら何んでも簡単すぎますよね。
アナログコンピュータがいちばん本領を発揮するのは微分方程式です。
でも、いきなり微分方程式のブロック線図を書くのは気がひけるので(しかも明日は義姉のお通夜で明後日はお葬式です。義姉は微分方程式が大嫌いでした。)今度は二元連立一次方程式の解を出すブロック線図にします。
普通の一次方程式ではつまらなすぎますから未知数が2つある連立方程式にしました。きっと天国へ旅立ったばかりの義姉も「微分方程式でないのなら勘弁しとくよ」と笑って許してくれるでしょう。
というわけでさきほどの最初のブロック線図のすぐ下にある二元連立方程式・・・
{ x + 0.6y = 1 と 0.2x - y = 0.8 }
これを解くブロック線図にしましょう。
式の形がこのままですとブロック線図を描けないので、x=の形とy=の形にします。
移項といって「=」をはさんで記号を左右へ入れ替えます。
{ x = 1 - 0.6y , -y = 0.8 - 0.2x }
というふうにします。
x = 1 - 0.6y のほうをすぐ下の左側へ書きました。
普通は三角形の中に文字は入れないのですが、漢字ひと文字を入れて何んの三角形なのかをわかっていただけるようにしました。
右側のブロック線図が-y = 0.8 - 0.2x のほうです。
これをくっつけるといちばん下のブロック線図になります。
帰還(フィードバック)をぐるぐる回りながらやっています。
これで解の出力x のところと yのところからプローヴで電圧を取り出せば答えはずっと表示されつづけます。
「1回表示すればいいじゃないか」とお思いでしょうが、一瞬で消えてしまったらイヤですよね。
こうやってぐるぐるフィードバックさせておけば電気が入っている限り、ずっと表示されているでしょう。
アナログコンピュータにはこういう方式のものもあるのです。
「じゃあ次回は微分方程式で・・・」とお思いでしょうが、義姉のお葬式はまだです。
初七日をすぎるまでは簡単な数式のをご紹介し続けます。
近いうちに必ず微分方程式の解を求めるブロック線図をご紹介しますね。
アナログコンピュータの教科書は世の中に山のようにありますが、ほとんどが微分方程式を解く例を紹介しています。
私もそうしようと思いましたけど義姉の初七日が過ぎるまでは難しい微分方程式の解法は書きません。
多元方程式や高次方程式や複素数などを取り扱ってひっぱります。
このブログはアナログコンピュータから始めました。
でも早くアナログコンピュータを終えてデジタルコンピュータが誕生したばかりのころの話に入りたいです。
コンピュータ開発が始まったばかりのころは電磁リレーを使ったり真空管を使ったりしていました。
その後、半導体の世の中になりましたが、高速スイッチングを繰り返すデジタルコンピュータでは初期のトランジスタはすぐに壊れてしまいました。
そこで日本独自のパラメトロン素子というのを使ったコンピュータが登場したのですが、やはりいろいろな問題が発生してたいへんでした。
(東大大学院の研究室にいらした当時の後藤さん(パラメトロンを発明したかた)へ相談したこともあります。)
10年以上まえにアスキー出版さまが「計算機屋かく戦えり」という本を出版してたくさん売れました。
以前、日本のコンピュータ開発黎明期の技術者が書いた「日の丸コンピュータかく戦えり」という本の題名をマネしたのでしょう。
あの本は当時の先端技術開発者が苦労した技術的問題と解決方法は何も書いてありません。
私はアスキー出版さまが出した日本のコンピュータ開発黎明期のことを紹介したご本が全く書いていない技術的なことをこのブログや、いつかは出したいと思っている電子書籍に書き遺してから逝きたいと思っています。
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