真空管その3.3極真空管の中で電気はどう流れるのか?

三極真空管の中の振る舞い

昨日は3極真空管のひとつの例で私が中学生のころに先生が教室へ持ってきた「ガラス管をはずした真空管(もしかすると模型だったのかもしれません)をスケッチした絵をお見せして各部の形を説明させていただきました。
 今日は3極真空管を回路図の中で表す記号と3つの極(だから3極真空管といいます)に電気がどう働くかを説明いたします。
このブログは私が就職して初めてコンピュータ開発に関わったころの思い出ブログです。
ところが私は真空管が使われているコンピュータを開発したこともありませんし、使ったこともありません。
思い切りこじつけ話をすれば、アナログコンピュータの繰り返し型で解を示す波形をブラウン管オシロスコープで観測したり、デジタルコンピュータの入出力端末に使われていたブラウン管ディスプレイを使ったことがあるだけです。
ブラウン管も確かに真空管の仲間です。
でもあれを真空管と呼ぶ人はいません。
ですから真空管の話は「思い出話」ではなくて学校で習ったか、先輩から教わったかのどちらかです。
 でも・・・・半導体を使った回路は当時いちいち「真空管等価回路図」という資料を作成していました。
そもそも当時の半導体は入力インピーダンスが低くて真空管とは性格が逆でした。
増幅も真空管は電圧増幅でしたが、半導体回路の場合は多くが電流増幅でした。
それでも世の中はまだまだ半導体アタマに切り替わっていなくてお客様へ説明するときはもちろん、社内のえらい人へ説明するときも真空管等価回路図をつけるのは義務みたいなものでした。
後年、1990年代になってからソフト開発の世界にオブジェクト指向というわけのわからないプログラミング言語が徐々に幅をきかせてきました。
オブジェクト指向の優れた点を若い人たちが盛んに言いまくりはじめました。
アセンブラでドライバを開発しているぶんには安泰でした。
ところが1990年代半ばにサンマイクロシステムズ社がJAVAというものを宣教師を使ってひろめてきました。
JAVAは仮想機械という概念がありまして、これを直接操作するJAVAアセンブラというものがあります。
喜んだのもつかの間、調べてみたら何んのことはないJAVAアセンブラ自体がオブジェクト指向。
あんなものがアセンブラだというのですからJAVAなんて大嫌いです。
真空管時代の先輩がたが半導体主流の開発になっても説明図面に真空管等価回路図の添付を要求した気持ちがとても良くわかりました。
・・・というわけで自分が扱ったこともない真空管の話をしばらく続けさせてください。

 まず3極真空管内部の部品配置やそれぞれの形は昨日図示して説明しました。
3極管、4極管・・・N極管にはアミ(格子とかグリッドというのが普通)があります。
陰極がヒーターで熱せられて飛び出した熱電子たちはアミの間をすり抜けて陽極へ到達します。
通常、アミには陰極に対してわずかなマイナス電圧をかけておきます。
陰極もマイナス、アミもマイナスですと電子は出られません。
でもアミは陰極に近いので陰極のヒーターの熱で少し熱電子が出てしまうことがあります。
でもわずかなものですから気にしなくて良いそうです。
アミがある真空管はアミにかかる電圧の変化でいろいろ働いてくれます。
手描き図の真ん中にあるのは回路図に真空管を書く場合の標準的な書き方を示しました。
真ん丸の中に陰極、ヒーター(普通は略す)、陽極の記号を収めます。
でもしばしば真ん丸ではなく円を半分に割って引き離したようなものの中へ陽極やアミや陰極を複数書き込むことがあります。
ひとつのガラス球の中へ複数の真空管の中身セットを入れた場合の図ですね。
今後、アナログコンピュータでもデジタルコンピュータでもそういう図がたくさん出てきます。

 まず手描き図ですが、上に2つの図があって左の縦棒が陰極です。
その右に円が縦にならんでいます。
これはアミを構成する1本1本の線の断面図です。
そして右側にある縦棒は陽極です。
左側の陰極が熱せられて熱電子が飛び出したあとアミに遭遇します。
アミがプラスだと(下の図いちばん左)ぐっと加速されて一気に陽極へ飛んでいきます。
 そしてアミの電圧が負になってくるとまんなかの図のようにアミと陽極の間のやりとりへと替わっていきます。
そして右側の図のようにアミの電圧が大きくマイナスになるとアミに比べて陰極でさえも(アミよりは)プラスになるので陰極からの熱電子放出が止まります。
 アミがプラスの高い電圧のときは激しく電子が陽極へ飛んでいき、アミがマイナスになってくるとだんだんと陽極へ飛ぶ電子は減るのです。
ここで電気とか熱のことをあまりご存知ないかたは不思議に思いませんか?
「入力の電圧が落ちてきたらヒーターも冷えてしまい熱電子がなくなるのでは?」という素朴な疑問が浮かんできませんか?
でもこの手描きの図など真空管の陰極の絵をよくご覧ください。
陰極そのものが熱を発しているわけではありませんよね。
ヒーターと陰極は別物です。
(別物ではなくヒーターと陰極が同じものもあって構いません)
ヒーターが熱しているのは陰極の電子飛び出し棒の下の囲い込まれた金属です。
ですからヒーター自体が熱くなり具合を小さくしても囲い込まれた金属はそうそうすぐに冷えたりはしません。
こうして間接的にやっているので温度の変動はあまりないのです。
陰極表面の単位面積あたりから飛び出す電子の流れを表現するリチャードソンさんの公式という計算式があります。
この式の意味を私はきちんと理解していませんのでここに書くのはおこがましいのですが、中学時代のノートになぜか万年筆で書きこんで目立つようになっているので重要な公式なのかもしれません。
リチャードソンさんになりかわってご紹介します。
間違えないように日本語言葉で言いますと・・・・
電子流=(陰極の材料の熱電子放出定数×陰極の絶対温度の2乗)のマイナス{(陰極絶対温度×ボルツマン定数)ぶんの陰極材料別仕事関数}乗 ←後ろ側の陰極材料別仕事関数のほうが分子です。
「陰極の材料の熱電子放出定数」とか「ボルツマン定数(1.3804×10のマイナス23乗)」とか「金属別の仕事関数表」とかを調べないと計算できませんよね。
ほかにも動作温度が関係する「熱電子放出効率(放出電流を陰極の加熱電力で割り算した値で単位はミリアンペア/ワット)」とか、細かい話がいっぱいあります。
いまこのブログを読んでくださっているかたが真空管を設計製造するとは考えられないので陰極材料の表(金属別仕事関数の表とかいろいろ)は省略します。
なお、このブログでは書ききれないもっと詳しい話を本に書いてお出ししようと考えていますが、そこでこの諸元表を出すかどうかはまだ決めていません。
「いや私は今から真空管製造にとりかかりたいから持っている資料は全部ここにさらせ」とお思いのかたは昭和32年(1957年)に真空管業界(の団体だったか、業界新聞だったか)が配っていた資料があります。
もう紙が経年劣化でぼろぼろですけど、きっと誰かがきれいに保存されていると思います。
だれも持っていない場合はどなたに許可をいただけば良いのかわかりませんが、法的に問題がない手続きができたら、もっと詳しい話を本に書いて出しますね。
ここでは法律を調べてまで詳しい話を書きませんので、いつか本を出したときにご興味がおありでしたらゲットしてくださればうれしく思います。
まぁ・・・それまで生きていたらの話ですけど。

手描き図の真ん中に書いた「回路図に記入するときの3極真空管の記号図をご覧ください。
下側に陰極があって、陽極が上にあって、間にアミ(またの名をグリッド)があります。
でも実際の真空管のガラスを取り除いた中身はこういう位置関係ではありませんでした。
(昨日の図と話を思い出してください)
位置関係は昨日のスケッチが正しいです。
真ん中に陰極棒が立っていて周りをアミが取り巻いていて、外側に陽極がある感じ。
真ん中からアミをすり抜けて陽極へ電子が移動するんですね。
途中のアミにかける電圧を按配することで交流電気を増幅したり、導通状態と非導通状態を作り出せばスイッチにも使えます。
 ということで次回は交流増幅のお話です。

三極真空管の中の振る舞い

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次