たまにはデジタルコンピュータの話を混ぜてみたいと思います。
アナログコンピュータのことばかりでは飽きてしまいますよね。
私は昔、会社のラグビー部員でした。我が富士通川崎工場の近くには東芝府中工場や日本電気やサントリー、そして同好会チームの雄といえばタマリバクラブ(多摩川だから多摩リバー→たまりば→タマリバクラブらしい)といった社会人ラグビーの強豪チームがひしめいていて大活躍。
それにひきかえ我が富士通はサッカーの川崎フロンターレとかいうヘンな名前のチームやアメリカンフットボールや女子バスケットや馬場馬術や陸上競技といった、ほとんどどんな競技だか知らない人だらけの地味なスポーツだけをして隠れて活躍していました。
陸上競技だけは大学駅伝で大活躍した選手がいたり、北京オリンピックの400メートルリレーでメダルを獲得したチームにメンバーが出ていたりで、なかなかそのスジでは有名なチームもありました。
しかし我がラグビーチームときたら忘年会にしか出てこない人ばかりで細々と生きながらえているのがやっとこさ。
お天道様に背中を向けて日陰暮らしのさみしいチームでした。
練習なんかなしで試合に行くのでタックルしに行って相手を倒す直前で足がつってころんでしまい、相手の選手に頭を踏まれて痛がっているうちにトライを重ねられて負けてしまうというパターンが多かったのでした。
ある日曜日の朝、電話がかかってきました。
「きょう、試合相手がふたつ見つかったから東大の駒場グランドまで来てよ」と。
久し振りにラグビーのかっこうをカバンにつめて出かけて行きました。
すると相手は第一試合が日産自動車のどこかの工場で、第二試合が安藤電気でした。
日産自動車はともかく安藤電気は当時、日本電気グループでした(その後、横河電機へ売却された)。
相手が日本電気グループだと知ったとたんに負けられないという高揚した気分になりました。
なんせ親会社の日本電気はNEACという大型汎用コンピュータで名を成し、その後は東芝と提携してACOSという名前で販売していましたし、パソコンでは伝説のPC98シリーズが日本のパソコン少年少女そして中高年までに幅広く浸透していました。
更に日本電気はトータリゼータでも競艇場23場(九州の唐津競艇場だけは日本電気ではなかった)や地方公営競馬場、競輪場、オートレース場ではじから受注していました。そのほかの分野でも私達と激しい受注合戦を繰り広げていたライバルどうしでした。
日本電気の子会社にうっぷんをぶつけたくなるのは人間として当然でした。(でも負けた)
その日本電気グループの雄であった安藤電気は当時、ROMライターという機器のトップメーカーでした。
でも少し考えてみると奇妙な装置です。
ROMはリードオンリィメモリーですからROMライターで書き込みできるということ自体が日本語の矛盾です。
「書き込みできる読み込み専用記憶装置」ってヘンでしょ?
そういう節操のない名前の機器を軽蔑している私は本日の記事で「書き込みできない読み込み専用記憶装置」を紹介します。
昭和30年代の最後に近づいたころにアジアで初のオリンピックを東京で開催しました。
東洋の魔女・ニチボー貝塚工場の女子バレーボール部が金メダルをとったり日本中が大興奮でした。
メインスタジアムの国立霞ヶ丘陸上競技場(普通は国立競技場と呼ばれている)の電光表示盤に富士通製が採用されてうれしくなっていた私は抽選で当たったチケットが駒沢競技場の試合だったことがショックでした。
駒沢と言えば、あの張本勲選手を擁する東映フライヤーズの本拠地駒沢球場。審判が自分側に不利なジャッジをすると、すぐに暴れ出す乱闘型の恐ろしい球団でした。
それで駒沢の競技場へ観に行くのはやめてしまいました。(たしかホッケーの試合だったように記憶しています。
というわけで本当の読み出し専用記憶装置である「EIコア」の話を始めます。
ちょうどあの東京オリンピックのころに流行っていたEIコアというパーマネントメモリーの話を聞いてください。
EIコアのことをネットで調べようと思いましたが面倒臭いので、自分の記憶で描いた図を掲げておきます。
電線に電流を流しますと、電流が流れていく方向に向かって電線の周囲には右回りの磁界が発生するということを利用した装置です。
英字の「E」の上下と真ん中の横棒の間に2つの隙間がありますよね。
そこのどちらかへ電線を通してしまい、英字の「I」でEの字のあいている側にフタをしてしまうと漢字の「日」という文字みたいに2つのトンネルができます。(正しいイメージは私が描いたヘタな手書きの図を見てください)
そして障子や襖の桟(下の障子をはめてすべらせる溝です)みたいにEの字の左立棒を下にして寝かせたら隙間に電線を通して上からフタ(Iの字で)をして閉じてしまうと2つのトンネルのどちらかに電線が通っているはずです。
左側を通した電線にこちら側からあちら側へ電気を流すと磁界は内回りに発生します。
逆に右側を通せば磁界は外回りに発生します。
電線に電気を流すと進行方向に向いて右回りで磁界が発生するのだから当たり前です。
これを右ネジの法則と言っていました。
そしてトンネルの左側を通した個所では磁界が内回りに発生し、右側を通した個所の磁界は外回りに発生します。
内回りのビットはオンで外回りのビットはオフと決めてありました。(私の記憶違いだったらごめんなさい)
オンとオフの状態を作ることができるのですから、これでプログラムを組むことができました。
しかもフタを開けて電線をつまみ出さない限りはこのプログラムはずっと変わりません。
これぞ本当のROM(読み込み専用記憶装置)だと思いませんか。
言葉でぐだぐだ書いていてもわかりにくいので、私が描いたヘタな手書きの図をご覧ください。お願いします。
要するに二つの溝のどちらへ線をはわせるかで「オン」か「オフ」かが決まります。
ふたをして2本のトンネルをつくります。
各切れ目の空隙で隔てられた個室が各ビットそれぞれの記憶場所となります。
各ビットのコアを流れる磁界の方向でオン/オフが決まるのでした。
もちろん図には書き込めませんでしたが各ビット個室から磁界に応じた電流を取り出してその電流の方向でオンかオフかが決まるのです。
目次
コメント