前回の話で左側に書いた電気振動系をアナログコンピュータでプログラミングするとこうなるという具体的な例をお見せして説明します。

上海

アナログコンピュータのプログラミングについてはたくさんの教科書がありますよね。
昭和30年代に中学生だった(つまり私と同年代の)方々は、今日お見せする話を観るとたぶん「あーーーーっ、懐かしい」と思わず叫ぶでしょう。
 さて、前回は運動振動系の実験装置とそれを電気的に模擬再現できる電気振動系の回路図をならべて電気回路の回路方程式と、等価な運動振動系の運動方程式の形が同じであることをご覧いただきました。
きょうはあの式の両辺をLで割ってd^2q/dt^2を求める式にするところから始めます。
先にアイキャッチ画面と2枚の手描き図について説明します。
アイキャッチ画面は上海市松江区の松江大学城の广富林路と龙马路が交差しているあたりにある小区の出入り口にある小さな商店街の角にある馒头屋さんの菜单看板の写真です。
この写真を撮ったのは2018年の春先でした。
コロナがあったのでしばらく行っていませんが、この次に行ったらきっと値上がりしているんだろうなと思い記録しておきました。
昭和30年代の日本はまだ物価高騰前で、ポケットに2千円も入っていたら、ちょっとした旅行ができたほどでした。
省線の初乗り運賃は10円でした。(子供は5円)
省線というのは今でいうJRです。鉄道省の電車でしたから省線。 昭和30年代はJNR(Japan National Railway = 日本国有鉄道)という公社でした。その時は国電と呼びました。
アナログコンピュータ全盛期はそんな時代だったということをおわかりいただけますか?
あれから日本の経済成長は目覚ましい発展を遂げました。
公立の中学校でこのような(今なら大学生でもてこずるような)ことを教えられていました。
科学技術の発展のために朝から晩まで小中学生にこういう教育が施されていました。

手描きの図は1枚目が前回の運動振動系を電気振動系で等価再現した場合にアナログコンピュータでプログラミングしたときのブロック線図です。
2枚目の図は上のほうに入力波形と出力波形を書きました。
下のほうにブロック図に用いた各単体計算回路のシンボルとその名称と説明です。
アナログコンピュータのプログラミング手順はこんな具合にやります。
(という例をお示ししました)

 手描きの図の1枚目の下側の式(d^2q/dt^2を求める式)と上の図を見比べてください。
最初の積分器の入力側にd^2q/dt^2が入ります。
その出力は-dq/dtです。
二番目の積分器の出力はqとなります。
加算器の出力側には1枚目の図の下側の式の右辺のそれぞれの量が加算されています。
t<0でのE/L=0、t≧0ではE/Lの電圧をかけるとさきほどの式を計算するように動作します。
2枚目の図の上の報に描いたような波形が出力されます。
経過時刻にあたる点の波形が示す電圧を読み取れば方程式の解になっています。
このようにアナログコンピュータの微分方程式での独立変数は経過時間です。
この例はバネがびよんびよんと振動する運動方程式の模擬計算ですからそのまま経過時間をみて電圧を読み取れば済みますが、独立変数が経過時間ではない場合の模擬式でも、独立変数を経過時間に読み替えて解くことでアナログコンピュータを便利に使いこなせるようになります。
またアナログコンピュータの電圧範囲が計算する対象の事象で扱って違和感がない範囲の外である場合でもそれぞれのパラメータのスケールを変換して計算すれば良いのです。
皆さんは計算尺を使ったことがありますか?
もう少し進んだら、計算尺の話題を投稿しますが、あれも目盛りのスケールを読み替えることでどんな桁の計算でも実行できます。
高周波の高速振動でも低速度アナログコンピュータで解くことができたり、振動周期が長くて遅い振動でも読み替えを工夫すれば高速現象を利用して解くこともできます。
 次回は2種類のアナログコンピュータそれぞれの特性をご案内します。
さらにそのあとは線形演算要素や直流増幅器のこと、そしてそのあとで真空管を能動素子にしたアナログコンピュータの解説を進めたいのですが、お若い皆様は真空管のことなどご存知ありませんよね。
そこでちょっとだけですが、真空管の入門程度の知識をつけていただけるお話します。
 この話はアナログコンピュータですが、真空管は初期のデジタルコンピュータでも使っていました。
半導体素子が安定してくるまでは真空管が大活躍したのです。
でも日本では東京大学大学院生だった後藤英一さんがパラメトロン素子を発明しました。
アナログコンピュータでいま真空管入門レベルのお話をするように、デジタルコンピュータの歴史では、日本独自の技術だったパラメトロン素子のことを少し長めに解説します。
パラメトロンにしろ、真空管にしろこの令和の時代にあまり見ません。
半導体の世の中になる前に時代の最先端だったそういう素子について先輩から直々に教わりましたので、書き遺しておきたいと思っています。



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